社外セミナーの講師も自らの成長の機会に

ビジネスとして何を達成すべきか
常にそれを考えながらモデル開発を進める。

高須 翔
01.6時間にわたるセミナーの講師として
準備を重ねる
私は学生の頃から数学とITを駆使して業務を進めるクオンツになりたいと考え、銀行や証券に絞って就職活動を行っていました。その中で、三菱UFJ銀行のクオンツがセミナーで発表したり、日銀でワーキングペーパーを書いていることを知りました。銀行内の業務だけでなく外部への情報発信の機会があり、社会人になっても研究を続けている人が多くいるということを知り、私自身、そのようなクオンツになりたいと考え、当行を志望しました。
実際、入行後には一般向けに開催するセミナーを担当する機会に恵まれました。日頃はチームのメンバーやトレーダーといった専門知識を持った人と議論することがほとんどで、外部のさまざまなバックグラウンドを持つ人を相手に話をすることはありません。金利系のモデル開発をテーマにした6時間のセミナーでしたが、前提となる知識がない人でも理解できるよう、基本的な事項から説明することを心掛けました。幸い出席者の方から「非常に分かりやすかった」と好評をいただき、また私にとっても、準備の過程を通して改めて気付いたり学ぶことが多く、貴重な経験になりました。
02.トレーダーが求めているのは
数学的な精緻さではない
入行以来私は、為替系のモデル開発の業務に携わっています。為替は電子取引が多く、リアルタイムの高速な計算が要求される場面が少なくありません。そうした要件を満たすロジックを考えたり、システムアプリケーションを考えることが必要です。また、為替に限りませんが「ビジネス上、何を達成しなければならないのか」を常に意識していることが重要だと考えています。私は数学科出身であるため、モデル開発をする際は数学的な厳密さを損なわないことに意識が向きがちです。しかし、トレーダーが求めているのはそのような厳密さではなく、ポジション管理のしやすさであり、PLの変化が直感的に説明できるといった定性的なものです。そのため、日常的にトレーダーに質問しながら、ビジネス上の課題やニーズを細かくヒアリングし、それに対するアイデアを考えるようにしています。先日も為替のフォワード取引の評価精緻化に取り組み、モデルの改良を進めたのですが、トレーダーからはもう少し柔軟な構造のものを想定していたといわれました。改めて投入するパラメータを絞り込み、依存している金利全体の変動を反映できるものに構築し直したところ、トレーダーからは「想像通りです。ありがとう」という言葉が返ってきました。
高須 翔
03.間もなくロンドンに赴任
新しいクオンツ像を築きたい
私はまもなくロンドンにあるグループ会社に赴任します。東京では行内でたたき上げのクオンツが大半を占めていますが、ロンドンには、海外のトップバンクから転職して来た人も多く、そうした人たちから新たな知見を得たり、幅広く勉強する機会が得られると思っています。また、ロンドンでは東京以上にトレーダーの要求に基づいてクオンツがモデル開発をするケースが多く、クオンツの発想では思いつかないようなロジックが用いられているといわれます。そうした環境に身を置いてモデル開発能力を高め、その知見を日本に還元したいと考えています。
今後の銀行業務においては、クオンツのようなアルゴリズムをつくることのできる人材の重要性が増すと考えています。AIを活用したトレーディングの進歩などにより、古典的な金融工学を機械学習と組み合わせることで、さまざまな自動化や新たなリスクヘッジ手法の開発など、より活躍の場が広がると考えています。モデル開発業務で身に付けることができる数学・ITのスキルやトレーディングの知識は汎用性の高いものです。金融工学の知識をベースにしつつ新しい知見をどんどん吸収して、汎用的になってきたものを金融の世界に取り入れていく――それができるクオンツになりたいと思います。