INTERVIEW

孕石 匡弘

MASAHIRO HARAMIISHI

リスク統括部
R&D室 モデル検証Gr

2008年入行

孕石 匡弘

規制強化の流れをリアルタイムで経験したことを活かして
モデルの審査・検証作業を通じたクオンツ業務のさらなる高度化をめざす。

孕石 匡弘

多角的な視野で、全体感をもちながら
モデルの審査・検証に臨む

私の現在の業務は、時価評価モデルや市場リスク計測モデルに対する審査や検証です。フロントで開発されたモデルに対して、コンセプトの健全性や実装の実現性、パフォーマンスの十分性などを確認していきます。モデルをつくり上げる仕事ではありませんが、国内外の多様なモデルを幅広く審査・検証しつつ、当行が求める品質の水準を理解し、それを保つ砦となる必要があります。理論的、技術的な知識が求められるのは当然ですが、金融庁の規制、行内のルールやシステムを理解した上で、それが守られていることの確認も必要です。また、セールスやトレーディングの現場からは、いつまでにシステムを稼働させたいという要望があり、時間的な制約もあります。自分がフロントでモデル開発業務を担っているときは、それをいかに精緻に仕上げるかということに専念すればよかったのですが、今は個々のモデルの精緻さだけに目を奪われているわけにはいきません。多角的な視野に立ち全体感をもってバランスを取ることも必要です。誰にでもできる仕事ではないと自負しています。

これまでに培った知識を総動員して
取り組むチャレンジングな仕事

審査の中でもデリバティブ評価に関するCVA(Credit Valuation Adjustment:信用評価調整)のときは、いつもチャレンジングです。CVAのモデルを考える場合には、原資産のデリバティブに対する数学的な理解だけでなく、同じカウンターパーティに対するデリバティブ債権のネッティング契約や、デリバティブ債権の担保保全などに関する幅広い知識が必要になります。通常のデリバティブの時価評価モデルの審査は、それ単独のコンセプトや計算があっているかという話で終わるのですが、CVAはカウンターパートのポートフォリオに対して考えなければならず、全体をまるごと計算することが求められます。
例えば、数年前に「中央清算されないデリバティブ取引に係る証拠金規制」という国際規制が制定されました。これは直接的にはCVA の計算方法を規定するようなものではありませんが、取引がこの規制の対象となる場合は、追加的に証拠金拠出が発生し担保保全の割合が変わることになります。そのため、CVA のモデルを考えるときには、まず規制内容を十分に理解し、考えられているCVA のモデルが規制のコンセプトに沿ったものであるかを確認しなければなりません。実は私は、フロントサイドモデル開発に関連してこの証拠金規制に携わったことがあり、このCVA モデルの審査は当時の知識を活かしてうまく対応することができました。
金融を取り巻く環境は、最近、特に早く、大きく変わってきていると感じます。規制や制度が目まぐるしく変わり、さらにそれらは相互に関連しています。これまで養った知識と経験を総動員して取り組む必要があり、とてもチャレンジングであると思っています。

孕石 匡弘

なぜこの規制が生まれたのか
背景や経緯を伝えていく

私の入行は2008年です。三菱UFJ銀行がFTのコース採用を開始した年でした。いわゆるリーマンショックがこの年に発生、その後の相次ぐ店頭デリバティブ取引規制の出発点になりました。私が当行でキャリアを積む時期が、まさに規制強化の世界的な動きと並行していたことから「なぜこの規制が必要になったのか」ということを進行過程のなかで理解してきています。「こういう背景と経緯のある規制だから、このコンセプトは守らなければならない」ということが言えるのは私ならではであり、それを若い人に伝えていくことも仕事だと思っています。
私はこれまで主に市場業務に関わってきており、フロントとしてモデルを開発する立場で、その後は審査する立場で仕事をしてきました。今後も市場業務の幅広い分野で、専門知識を活かしながら活躍していきたいと考えています。その一方で、金融業界を取り巻く環境は大きく変わってきており、新しいことへの挑戦が一層求められる時代になっています。フィンテックにも大いに興味があるので、テクノロジーを駆使して新しい市場をつくり出すという仕事にも挑戦したいと思います。新しいことをやるのは仕事の中で一番楽しい部分です。今後も高いチャレンジ精神を持って業務に取り組んでいきます。